探求三昧 by 百瀬直也 - 地震前兆研究家の地震予知・地震予測関連ブログ

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東日本大震災は予測されていた(6)角田史雄氏

これは地震予知についての連載記事(不定期)で、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)で、事前に地震を予測/予知/予言していた人や動物について紹介している。
第1回目は下記で書いている。

今回は、最終回として、新しい地震発生理論を提唱している科学者の研究を、追加版として紹介したい。
この記事では、大震災を事前に予測していたというよりも、今後の地震予知に有効になるかもしれない研究として紹介する。
内容的にちょっと難しくなってしまうかもしれないが、必要最低限のことは説明しなければならないので。

地震の癖

2週間ぐらい前だったか、花小金井駅前の書店に入ると、地震・防災関連の本のコーナーができていた。
さまざまな地震関連の本の中で、いちばん強く興味をもったのが、『地震の癖 いつ、どこで起こって、どこを通るのか?』(角田史雄著、講談社α新書)だった。

地震の癖──いつ、どこで起こって、どこを通るのか? (講談社+α新書)

地震の癖──いつ、どこで起こって、どこを通るのか? (講談社+α新書)


あとでAmazonで注文しようと思い、書名だけを覚えておいた。
ところが、帰宅してAmazonで見てみると、「この本は現在お取り扱いできません」とあった。
それで、またその書店へ行って購入した。
2009年8月に発売された本で、東日本大震災発生後に売れ行きが伸びて、書店品切れになったのだろうか。
この記事を書いている時点でもAmazonではまだ品切れ状態だが、近日中に増刷されるだろうと思われる。
この本を、今日やっと読み終えた。

プレート説では地震メカニズムを十分に説明できない

著者の角田史雄博士は、構造地質学を専門とする埼玉大学名誉教授だ。
本の帯には、「プレート説の『予知』はなぜ当たらないか」とある。
角田氏によれば、プレートテクトニクス説では、さまざまな地震の発生メカニズムを十分に説明したり、十分な対策を立てたりすることは難しいという。
地震予知が当たらないのも、そのためだと。
そのため、そもそも地震とは、本当にプレートの活動によって起きるものなのだろうかという疑問が、研究者の間で広がっている。


角田教授も、地震の世界で“常識”と考えられている「プレートテクトニクス説」は、地震の原因を十分に説明することはできないと指摘する。
今回の東日本大震災の地震を予測できなかったのも、そのためだと。
そして、プレートテクトニクス理論に代わるものとして、「熱移送説」を提唱している。
『日経ビジネス』誌オンライン版の3月22日(火)の記事で、角田史雄教授に取材し、熱移送説が紹介されている。
前述の本とこの記事を参考にして、熱移送説を簡単に紹介したい。

 

プレート説に代わる「熱移送説」

「熱移送説」は、地核で発生する「熱」が地殻に影響し、地震を起こしたり火山を噴火させたりするという考えだ。
地核で発生した高温の熱が、外側にあるマントルや、さらに外側にある地殻などを貫いて、地球表層部に伝わる。
この熱が、環太平洋沿いに伝わって、噴火や地震を引き起こすエネルギーになる。
地核からの熱が地球表層部を伝わり、次々に火山の噴火と地震とをペアで発生させていく。


近年の研究によると、地中のマントルは均一ではなく、高温により溶けている部分と、岩石が個体として存在する部分に分かれていることがわかってきた。
この溶けた高温部を、角田氏は「スーパープリューム」と呼ぶ。
マントルトモグラフィという最新技術で、地球内部が可視化できるようになった。
これで見ると、地震の多発地域である日本列島の地下のほとんどは、このスーパープリュームで埋め尽くされている。


地震発生のメカニズムを簡略化すると、次のような遷移をたどるという。

  1. 地下でマグマの高温化が発生
  2. 岩石が溶けて温度と液体圧とが上昇
  3. 体積膨張が発生
  4. 弾性変形・破壊
  5. 地震が発生

 

四川大地震を予測していた

熱移送説によると、地震と火山噴火は同じ原因で起きるが、その発生場所はあるルートに沿って年々と移動していく。
このパターンは繰り返されるが、角田教授はそれを「地震の起こり癖」と呼んでいる。
つまり、地震には「通り道」があるというのだ。
この地震の癖を把握すれば、地震や火山噴火の発生をある程度予測することも可能となる。


2008年5月12日には、中国四川省でマグニチュード8.0の四川大地震が発生した。
この地震の発生は、従来のプレート説では説明が困難だ。
だが、角田教授は2007年4月にミャンマーで地震が起きたときに、「熱エネルギーに余力があれば、中国の四川あたりで地震が起きるよ」と、学生たちに予言していたという。
この地震は、2004年に発生したスマトラ島沖地震から地震の通り道に沿ってだんだんと北上していった結果として起きたものだった。
これが、東アジアでの「地震の癖」なのだという。
私がこの人の研究に関心をもったのも、四川大地震を予測していたことを書店で立ち読みした結果だった。

東北地方の地震の癖

『地震の癖』の第五章は、「北陸・東北地方の地震の癖」となっている。
ここでは、過去に起きた北陸から東北地方にかけての地震と火山噴火の発生箇所が次第に北東方向へ移動して行ったことを説明している。
2004年の中越地震や2007年の能登半島地震も、この移動ルートの上で起きたものだった。
その後、南は安達太良山から北の鳥海山あたりまでの範囲へと地震と火山噴火は移っていった。
そして、2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震(M7.2)で一区切りついたというような書かれ方をしている。
「岩手県内陸南部地震を起こした『HT線』は、東北から北海道の太平洋岸側へ移動中なのかもしれません」とある。
(「HT」は「北陸・東北」の略だと思われる)

東日本大震災の発生はどう説明がつくか

だが、実際は2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生した。
震源は、位置的には2008年の区切りである「HT線」の境界ぎりぎりあたりだった。
角田理論によれば、すでに移動ルートを過ぎてしまった地域で大地震が発生したと読み取れなくもない。
だが、

東北にはまだ地震エネルギーが残っているかもしれません。
(『地震の癖』(角田史雄著、講談社より)

とか、

太平洋側の東北の内陸から日本海港の間は、まだ『VE課程』の活動ができる程度の余力はあるということができます。
(『地震の癖』(角田史雄著、講談社より)

というような表現もされている。
これまでの研究に若干訂正が必要なのか、あるいは私の読み方に適切でない部分があるのだろうか。


前述の『日経ビジネスONLINE』の記事は、大震災の直後に角田教授に取材されたものと思われる。
この記事によれば、この大地震の発生は次のように説明される。
関東・東北では、3/11の超巨大地震の前に、地震と噴火の移動が何回も繰り返えされた。
その熱移送が多かった状況だが、大きな噴火は三宅島以外にはなかった。
関東・東北の地下には、地震を起こすエネルギーがため込まれた。
その上に載る「花崗岩質岩層」は、真ん中が厚く、日本海沿岸と太平洋沿岸が薄い。
高圧で押し曲げられたこの岩層は、薄くなる太平洋沿岸域で大きく裂け、超巨大地震が起きてしまった。

今後も関東〜東北で大地震は起こり得る

角田教授は、さらにこう指摘する。
裂けた岩層ブロックには、大きな余震を次々に起こすだけのエネルギーが残っている。
それが、西隣の関東・東北の岩層ブロックを突き動かしている。
その縁が激しく揺れ動くため、縁に当たる南北海道、東北の日本海側沿岸、北陸、信越、南関東、東北の太平洋沿岸では、後続の地震の起こる可能性が高い。
3月15日の夜に静岡県東部で発生したM6.4の地震も、このひとつだという。
この超巨大地震のエネルギーが弱まるには、1年ちょっとかかる。
1年あまりは、上記の地域では、マグニチュード6〜7程度の余震に要注意だという。


それから、この本の記述で気になるのは、次の箇所だ。

マグマ活動が盛んな時期に、太平洋沿岸で巨大地震が起き、その約一年後に内陸で火山の噴火や大地震が起きているのです。
(『地震の癖』(角田史雄著、講談社より)

上記の「巨大地震」が、東日本大震災に当てはまるならば、次は東北の内陸部の地震(直下型)や火山噴火が要注意だろう。
角田教授の首都圏を含めたこれから起こり得る地震の予測については、別の機会に紹介していきたい。

プルームテクトニクス

以下は、詳細は省くが、参考までに。
地球の構造・地球科学の分野では、1990年頃から「プレートテクトニクス理論」を発展させた「プルームテクトニクス理論」が提唱されている。
マントル内の大規模な対流運動をプルーム(plume)と呼び、この変動を検討するものだ。
角田史雄教授の熱移送説も、この新しい学説の流れに沿ったものと言えるだろう。

 

おわりに

以上、科学的な見解から非科学的(未科学的?)な予言などまで、さまざまな「予知」「予測」などを紹介してきた。
どんな方法であっても、大きな犠牲者を出してしまう大地震を事前に予測できる方法が見つかれば、それに越したことはない。
自然界の力を見くびってはならない。
人間たちがたかだか300年かそこらで築きあげてきた近代自然科学というものは、まだまだ不完全なものだ。
人類が地球の自然環境を完全にコントロールできるという盲信や過信は、自然災害の大きな被害につながる。
日本のアカデミズムは、地震予知は不可能だなどと言っていないで、日本国民の人命を守るために、できる限りの努力をすべきではないだろうか。


これで一応、東日本大震災の「過去」については考察を終えることとする。
次はやはり、「未来」のことだろう。
つまり、これから起きる大地震のこと。
多くの人命がかかっていることなので、これに全力を注がなければならない。
明日から仕事に入り、多忙な日々が続くと思うので、平日はブログを書く暇もないかもしれない。
週末に暇を見つけて少しずつやっていきたい。
【連載・完】





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