【関東大震災100年:防災の日】関東大震災で起きて首都直下地震でも再度起きるかもしれないこと(2)

2023/09/02

首都直下地震 大地震 防災

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昨日9月1日は「防災の日」ということで、昨日の第1回目は、関東大震災で起きて、首都直下地震でも再度起きるかもしれないことをまとめた。

今回は、そのタイトルに拘らず、次の首都直下地震で発生するかもしれないことを書いてみたい。


■2回目

この記事は昨日の第1回目の続きなので、まだ読んでいない方は下記の記事を最初に読まれることをお勧めする。



第2回目の今回は、タイトルとは矛盾してくるが、初回の想定を変更して、主に「関東大震災では起きなかったが、次回は起きるかもしれないこと」に焦点を当てることにしたい。


■5:“凶器の雨”が降り注ぐ

100年前と現代で大きく異なる点の一つは、特に都心では道路脇に高いビルが立ち並んでいること。

それらが全壊・半壊したり、そこまで行かなくとも壁の一部や窓ガラスが割れて道路を塞いだ場合、消防車などの緊急車両も通行が困難になる地域が多発すると思われる。


徒歩で避難する人々にとっても同様で、避難場所へ歩いて行くにも大きな障害となるだろう。


下記の写真は、2005/03/20の福岡県西方沖地震(M7.0、最大震度6弱)で、道路上に窓ガラスの破片が散乱した福岡市・天神の状況。

大地震の発生時には、屋内でも屋外でも、普通に歩けると考えるのは「正常性バイアス」のせいかもしれない。



中央防災会議では、1970年以前に建築された建物の3割方は、窓ガラスや壁面の落下が起こるだろうと想定している。

首都直下地震のパターンの一つとして想定されている東京湾北部M7.3の地震が発生した場合では、首都圏全体で2万1千棟の建物から落下物があるとされる。


また、住宅のブロック塀や無数に存在する自動販売機も凶器となり得て、前者では11万ヶ所、後者では6万3千ヶ所が転倒すると予測されている。


■6:欠陥マンションで想定外の大惨事も

建築検査のプロである船津欣弘氏が著した「新築マンションは9割が欠陥」(幻冬舎)によると、現代の新築マンションの9割方は、何かしらの欠陥があるという。


それが世に知られるようになったのが、2015年頃に社会問題となったマンションの「杭打ち不正」だろう。

これが、たとえば都心の高層ビルで同様の事態があった場合にどうなるだろうかと思うと、恐ろしいものがある。


都心の埋立地などの軟弱地盤でも、高層ビルよりは築年数が高い中層ビルの方が倒壊の恐れなどが高い。

それは、あくまでも「杭打ち不正」がないという前提の話であり、液状化が起こらない地下の層までしっかり杭が打たれていなければ、高層ビルもどうなるかわからないだろう。


船津氏によれば、大規模なマンションのような建築の場合、多いと30社もの業者が関係し、実際の作業は下請け、孫請け業者に回される。

その下部階層で日給や月給で働く請負労働者たちは、上層の業者に利益を抜かれて非常に薄給となり、時間がかかっても丁寧な作業を行おうという意識は生まれにくくなるという。


また、その他にも欠陥につながる要素としては、日本では分譲マンションが着工前や完成前に販売されたりするせいもあるという。

こうした欠陥を生み出す余地が多いという点は、地震大国の日本では空恐ろしくなる部分だろう。


たとえ上記のような欠陥がないとしても、東京では高層のタワーマンションでも問題が発生しやすい。

大地震が起きればエレベーターが停止し、火災が発生したりすれば、特に高層階の住民にとっては、煙の中を階段を降りて避難することさえ困難になる。


20階以上の高層階から、たとえばお年寄りが階段を降りて避難するのに、どれだけの時間がかかるだろうか。

高層マンションとは裕福な人々にとってステータスにはなるだろうが、いざ大地震が起きた場合を考えると、それほどの大金をはたいてまで住む価値があるだろうかと疑問に思えてくるのだ。


■7:ネットインフラの崩壊

数年前、全国的な規模でのインターネットの接続回線に大規模な障害が発生した。

数時間後に障害は復旧したが、その後も一部では通信状態が不安定になるなどの現象が起きていた。

原因は、複数のネットワーク事業者が共有する経路制御の情報に誤りがあったためだという。


この例のように、大規模なネットワークなどの障害は、いつ何の理由で起きるかを想定することは極めて難しい。

これは、過去に25年間ほどソフトウエア・エンジニアとしてシステム開発などを経験してきた自分が強く思うことだ。


ソフトウエアには、プログラムのバグなど、“人間の誤り”に由来する障害などが多く発生するが、そもそも人間は過ちを犯す存在だとして、ある程度の幅を持たせて開発スケジュールなどが計画される。

だが、それでもまったく予期していなかった「想定外」は起きてしまうものなのだ。


最近では、世の人々は「AI」に過度の期待をしているようだが、元SEは「人間が創り出すものに『完全』は無い」とデフォルトで考える。

もちろん、人間が創り出すAIも、その点では同様だ。


実は、政府機関などの首都直下地震の被害想定では、証券取引所や銀行などのネットワークを含めた中枢機能が完全に麻痺するような事態は考慮されていない。

だが実際はこのような事態は起こり得ることであり、そうなれば日本経済に大打撃を与えることは必至と思われる。

政府にとっては、だからこそ想定したくないのだろうが。


■最大の「防災」は何か?

このように、首都直下地震の想定が必ずしも十分にされていないことの理由の一つには、「意図的に不十分にしている」という部分があるのではないかと疑念を持たざるを得ない。


首都直下地震に限らず、甚大な被害が出る災害の想定というのは、政府にとっては「真実を知らせたらパニックになる」などの理由で、知らせたくないものだろう。

こういうことは、当てずっぽうに言っているのではなく、仕事柄オフレコでそのような情報が入ってくるということもある。


また、巷で「防災」ということが語られる際によく話題に上るのが、「帰宅困難者」や「食糧備蓄」のことだ。

だが、こうした傾向を見るたびに「優先順位が違うでしょうが」と思うのだ。


「初めに“生存”ありき」で考えているのではないかということだ。

日本人の中には特に、「自分は絶対に大丈夫」と考え、結果的に大災害で命を落とす人が多い傾向があるが、このような思い込みの心理状態は「正常性バイアス」と呼ばれる。


このような偏見を持たずに、まず何よりも先に、「命が助かること」を優先して考えて行動することが先決だろう。


こうして見てきたように、特に東京都23区内は、首都直下地震が発生した場合を考慮すれば、「危険だらけ」の地域と言わざるをえない。


スイスの保険会社スイス・リーが2013年にまとめた「自然災害リスクの高い都市ランキング」で、東京と横浜が不名誉な1位となった。

首都圏で大地震が発生すれば約2900万人が影響を受けるという理由だ。


ドイツの会社ミュンヘン再保険が世界各都市の自然災害リスクをまとめた結果でも、東京はロサンゼルスの7.1倍も危険性が高いとされる。


防災科学技術研究所客員研究員の水谷武司氏は、「都市は危険に満ちており、防災という観点から考えれば、人が密集する東京に住むのは非常に危険です」と忠告する。


こうして書いていると、ため息しか出なくなる。

あくまでも自分の考えになるが、自分や家族の命を守ることに関しては、政府やメディアが言うことを鵜呑みにしてはいけないということ。

もっとも、このような自分の考えを他の人々に押し付ける気は毛頭なく、この部分は独り言として捉えてください。


【参考】

◎「新築マンションは9割が欠陥」(船津欣弘、幻冬舎)


◎「Newton別冊 次にひかえるM9超巨大地震」(ニュートンプレス)



※私は外出時に、iPhone、Amazonタブレット、モバイルWi-Fi、ネッククーラーを持ち歩くので、充電用に20000mAhのモバイルバッテリーを持ち歩くが、出先で使い切った試しはない。

だが、「防災用」を考えると、これでも足りないかもしれず、次に買う時にはもっと大容量を前提に選ぶだろう。






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