【連載】熊本地震から7年~大地震の前に起きていたこと(5)「地震雲」は本当に「存在しない」のか?

2023/04/17

地震雲 地震前兆 地震予知

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この連載の最後として、7年前の熊本地震の前にも観測されていた「地震雲」と呼ばれる雲について、気象の専門家諸氏が主張するように本当に「存在しない」のかも含めて考えてみたい。


■「地震雲」について

私がなぜ地震雲についてあまりブログなどで書かないのかと、不思議に思う人もいるかもしれない。

地震前兆現象の研究を始めた当初は、もっと積極的にそのような情報を収集して、また自分でも観測を行っていたりした。


だが、今ではこのような分野は、あまり「お気楽」に語るものではないと思うようになった。

自分自身が、あまりにもお気楽に地震雲について語って、予測したりしていた。

そのような反省を込めて、現在はより慎重に扱うように変わってきた。


雲と地震の関係については、それ専門で一生の仕事にするくらいの覚悟と時間が必要だろう。

私には、それだけの時間がないから手を付けないでいるという要素が大きい。


ただし、いままでの文脈でわかったと思うが、地震雲の存在をアプリオリに否定するつもりはない。

というか、過去に自分で撮影した雲の写真のうち、いまだに結論づけることができないものがいくつかある。

今日はそれらの写真や他の人が撮影した写真をいくつか紹介する。


■地震雲?(1)

まず、10年前にSEとして東京都大田区の流通センター駅付近に派遣されていた際に撮影したもの。


・2013/12/17 08:30、大田区の東京モノレール羽田空港線・流通センター駅付近で撮影した写真。

東へ収束する波状雲を撮影した。


流通センター駅から東方の方角をマップで示す。


このような波状雲は、気象学上では雨の前兆雲とされている。

それ以外に、地震の前兆雲である可能性があると仮定して話を進める。

そうである場合に、対応するかもしれない地震としては、下記のものがある。


 →2013/12/21 01:10:茨城県南部、M5.2、震度4

 →2013/12/21 10:34:千葉県東方沖、M5.5、最大震度4

 →2013/12/23 15:57:関東東方沖、M5.9、最大震度1

 →2013/12/23 18:25:関東東方沖、M5.7、最大震度1



地震前兆の雲であるとすれば、これらのうちのいずれか、または複数の地震に対応するものだったのかもしれない。


■地震雲?(2)

次は、同じ流通センター駅付近で撮影したもの。


・2014/05/13 18:00頃:大田区流通センター駅付近で

 南南西に伸びる帯状雲


この写真は、2014/05/14にInstagramメインアカウント @nmomoseで投稿していた。



流通センター駅から南南西方面へ線を伸ばすと、下記マップのようになる。


この雲に対応するかもしれない地震としては、翌日の下記の地震がある。


 →2014/05/15 18:48:相模湾、M4.2、最大震度2


私が企画・執筆したムック『予言・天変地異』でも、自分の地震雲に関する執筆記事で紹介していた。


■地震雲?(3)

次は、7年前の熊本地震(前震か本震)の1週間前後前に、私のFacebookつながりの人が撮影した写真。


・2016/04/07 15:00頃:大分県宇佐市の米神山山頂近くで撮影


検証した結果、米神山山頂近くから南南西方向へ向けて撮影したと思われる。

中央の遠方に見えるのは霧島山か。


この写真は、今回紹介した3葉のうちで一番判断が難しい部分がある。

まず、雲の形状を見ると、カメラを向けている方角に「収束」しているとは素直に考えにくい点。

もっとも、絶対にそうではないとも言い切れないが。


この雲が熊本地震の前兆雲だとすれば、霧島山方面よりも多少西へズレることになる。


あるいは、上記マップに書き入れた大分県中部や熊本県阿蘇地方のM5クラスの地震の前兆雲だった可能性も考える必要があるかもしれない。


■真剣にやるならば

今回紹介した雲は、「地震雲」の研究を更に積んで行けば結論を出せるかもしれないが、私にはその時間的余裕がない。


「地震雲」の存在を肯定するにも否定するにも、故・池谷元伺氏の著書や論文に目を通さなければ話にならない。

というのも、この方は「地震雲」の存在について科学的に実験を行った、世界で数少ない人物だからだ。


その意味では、メディアやWeb上で気象予報士や気象学者諸氏が「地震雲など存在しない」といくら主張しても、説得力が乏しくなるのだ。


上述の気象学の専門家諸氏は、恐らく池谷氏が行ったような「地震雲の実験」など行っておらず、単に机の上で検討しただけで「あり得ない」と語っているのではないかと、これまでの印象では思えてくるのだ。


「地震雲」の名付け親である故・鍵田忠三郎氏の著書も、地震雲を語るには読むべき本だろう。

ただし、その研究方法は独自のアプローチによるもので、あまり「科学的手法」とはいえない部分がある。



やはり、故・池谷元伺・大阪大学名誉教授の研究の成果をまとめた本は、地震雲の有無を検討するのに必読の書籍だ。

『地震の前、なぜ動物は騒ぐのか―電磁気地震学の誕生(NHKブックス)』は、絶版だが今ならばまだAmazonで1000円以下の古書が数冊ある。


この本では、『Ⅳ大気の前兆現象』の「地震雲と地震霧」の項で17頁にわたって地震と気象の関係について書かれている。



また、池谷氏の研究論文としては「地震雲の形成過程について」がある。


自分が撮影した写真を「地震雲かも」とネット上に投稿する際には、撮影日時・撮影した方角くらいは最低限書き添える必要があるだろう。

「地震雲」を肯定するにも否定するにも、低次元なレベルでの議論を脱して、特に否定する方は馬鹿にせずに先入観を捨てて論じていただきたいものだ。



※かつては『週刊現代』もこんな本を出していた。




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ノンフィクションライター、地震前兆研究家、超常現象研究家、ブロガーの百瀬直也が地震・災害などを扱うWebサイト/ブログ。

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