最新の講談社『FRIDAY』の記事で、トカラ列島近海の群発地震が、南海トラフ巨大地震の発生と関係ないとは「断言できない」との見解が出て、他の科学者が否定する中で貴重な意見として、検討したい。
■トカラ列島群発地震
まず、06/21に始まったトカラ列島近海の群発地震は、これを書いている07/19時点で2600回を超えている。
下記の検索結果はすべてでは上限を超えるので、M3.0以上に絞っている。
だが、ここ数日のデータを見ると、07/16が51回、07/17が19回、07/18が32回、そして今日07/19が17:00時点で4回と、急速に発生頻度が低くなっている。
もっとも、07/06の313回のピークを過ぎて数日間は激減したが、5日後からまた増えて行ったということもあるので、終息に向かっているとは一概には断定できない。
■FRIDAY記事
『FRIDAY』2025年8月1日号に、「南海トラフ地震「発生リスクは確実に高まっている!」トカラ列島近海で震度1以上の揺れが2000回以上」と題した記事が掲載された。
それが、今日の同社Webメディア『FRIDAY DIGITAL』に掲載された。
トカラ群発と南海トラフ巨大地震の関連については、学者に意見を求めれば必ず否定的な意見が返ってくるだろうと思っていたが、この記事タイトルを見るとそうでもないらしい。
誰に意見を求めたのかが気になって、読んでみた。
■流体が原因
まず、東京大学地震研究所の笠原順三名誉教授が、こう語る。
「トカラ列島は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む境界の西側上部に位置しています。フィリピン海プレートの上には、海水を含んだ堆積物(たいせきぶつ)が乗っている。沈み込みによる地下温度の上昇や圧力により、堆積物から放出された水分が、ユーラシアプレートの岩石と混ざり通常より低い温度でマグマに変わるんです。地下のマグマが海底付近の割れ目を通って上昇し、トカラ列島を南北に押し広げるように動かしていると考えられます」
次に、東京科学大学理学院教授・中島淳一氏(地震学)が続ける。
「流体が活断層内やプレートとプレートの境界に入り込むと、巨大地震を起こす要因となりえます。潤滑油のような役割を果たし、断層やプレートを動きやすくするんです。’11年3月の東日本大震災の直前には、流体によると思われる『スロースリップ』(プレートがゆっくり動く現象)を観測。昨年1月に起きた能登半島地震の前から活発だった群発地震も、流体が原因と考えられます」
能登半島地震でも「流体」が重要な要素だったが、今回も注目点のようだ。
■気象庁は否定するが…
気象庁の南海トラフ地震評価検討会は、現在トカラ列島近海で起きている群発地震は、今後30年以内に80%ほどの確率で起きるとされる最大震度7の南海トラフ地震とは「関係ない」と表明している。
だが、関西大学特別任命教授の河田惠昭(よしあき)氏は、国の意見に疑問を呈する。
「両者とも、フィリピン海プレートが沈み込み、ひずみのエネルギーが溜まることにより起きる地震です。『関係ない』とは断言できないでしょう。むしろフィリピン海プレートの動きが活発化していると解釈すれば、南海トラフ地震の発生リスクは確実に高まっているといえます」
私が考えているのも、この意見に近い。
後述する黒潮の状況を見ても、まるで巨大地震の発生を「護る」かのように長期間安定していた大蛇行に、不穏な動きが見られる。
多数の犠牲者が想定される大災害の発生有無については、1人や2人の科学者の意見だけで判断せずに、多くの意見を参考にすべきだろう。
■黒潮大蛇行の現状は?
ここで、学界の定説にはなっていないが、例によって持論である黒潮大蛇行と南海トラフ地震との関係について、最新の状況を見てみる。
国立研究開発法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC)のWebサイトが定期的に配信する『黒潮親潮ウォッチ』の最新版は、2025/07/17に発表された。
「2025年9月13日までの黒潮「長期」予測」と題している。
2025年9月13日までの黒潮「長期」予測(2025年7月17日発表)
この冒頭の行には、こうある。
黒潮大蛇行から渦がちぎれて蛇行が小さくなった後、予測どおり蛇行は再発達しています。ただ、黒潮大蛇行らしくはなく、長期には保たれなさそうです。黒潮に吸収された渦が、大蛇行的な流路になる可能性があります。
下記の図が、07/13時点の黒潮の流路。
別サイト『earth』の同日の状況では下記の通りで、ほぼ変わりがない。
これが、2ヵ月後の09/13にはこうなると予測している。
この予測通りになるとすれば、黒潮大蛇行の渦はかなり小さくなるようだ。
そして、その後に大蛇行が終息に向かえば、自説では南海トラフ巨大地震の発生可能性が高くなることになる。
■大蛇行もどき?
問題は、現在の黒潮の状況が、本来の意味での黒潮大蛇行と言えるかどうか。
この点については、JAMSTECの最新版にある「蛇行は再発達しています。ただ、黒潮大蛇行らしくはなく、長期には保たれなさそうです」が、微妙な表現を含んでいる。
2ヶ月後には、蛇行が小さめかもしれないと予測しているが、その後にどうなるかが、南海トラフ巨大地震の発生に関して、注目すべき点だろう。
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